2015-07-06 (Mon) 18:24 ✎
【神戸市立須磨海浜水族園】 訪問日 2013/12/31
現在は2015年7月である。
過去に訪問した動物園や水族館について、私見を述べたいと思う。
ソースは2013年12月だ。いささか旧聞に属するため、当記事であつかう事項については、現在すでに存在しないものも含まれるかもしれない。
とはいえ、「以前行っていたこと」、つまり歴史を知ることは、当該の園館の志向理解を深める一助となるだろう。
いや、僕の懐古趣味的日記だけどね、所詮(笑)
須磨水族館を訪問したのはイキオイだ。
大晦日のこと。年越しを京都で迎えるために、家族(妻と当時4歳の息子と僕)で新幹線に乗っていたとき、不意に妻が「須磨の水族館が今日開いているよ・・・!」とつぶやいたのだ。受けて「降りよう」と即答した僕。京都行のチケットを反故にして4時間ほど兵庫に滞在することになったとさ。

須磨水族館。愛称はスマスイ、市民だけでなく自らもその愛称を自称しているようだ。
そういうのにちょっと恥ずかしい気になりませんか。アイドルが愛称で自分のことを呼ぶ感じ。
「“ももち”ねー」みたいなさ。恥ずかしい、でも「アリ」。みたいな。
むしろ、最初の一抹の照れが、それを乗り越えた先に深い親近感を醸成する気がする。
なお、ももちは愛称ではあるが正式名称でもある旨を書き添えておきます。
スマスイの話であった。
スマスイ近くの道路によくわからないモニュメントが並んでいた。冗談のわかる水族館という主張だろうか。
館自体のスマートな外観とのギャップにさらによくわからなくなる。
この時点で、「スマスイ=ちゃんこ鍋」のイメージがわが家族を覆い尽くしていた。今思えば、そのイメージは概ね合っていたわけだが。

スマスイには、広い敷地内に本館のほか12のパビリオン(遊園地含む)が点在している。経路があるわけではないので、東へ西へ敷地内を駆けまわることになる。施設間の移動はほぼ屋外だ。およそ水族館らしくない。これほど開放感のある水族館も珍しいと思う。

本館に入ってすぐ、スマスイのシンボルという「波の大水槽」(水量1200㌧)。大きい水槽はそれだけで魅力的だ。
世界ではじめての波が起きる水槽だったという(1987年)。外光も射しこむ。綺麗。
シロワニ(サメ)もいた。
目の端に違和感のあるものが映る。「こたつで魚鑑賞」・・・マジか(笑)
笑ってしまった。しかしこの取り組みは深いと思う。
一見奇異であるが、入ってしまうと「いつもの感じ」なのだ。それはもう落ち着く。年末の特番を見るようにサカナを見る。いつまでも見ていられる。
サカナを見ようと思ってずっと見ていられる人は、あまりいないと思う。見ていられるのは、すでに興味があるからで、興味をもつために見続けることは、ふつう、できない。
しかし居ること自体が快であるならば、そこでパンレットを読みつつおしゃべりに興じ、話の合間にときたまサカナを見るなんて芸当が可能になる。
そうして、ぼーっと見ていたら、「あ、あれと同じ」とか「さっきのと違う」とか気づく瞬間がくる。
興味は、ここで初めて発動する。
自分の(ぼーっと見ながら集めた)もっている情報と目の前のサカナを比較したくなるのだ。僕らはやっとサカナを真剣に見る。逆に言えば、具体的な目的がなければ、何かを見続けることはできない。
「こたつで魚鑑賞」は日本人の生活様式に根ざした見事な鑑賞法だと思う。
日本人にとって基本スキルである「こたつで長時間過ごす技術」が、「サカナに興味が無い人をサカナの前に座り続けさせる」ことを可能にしてしまった。慧眼である。
今後も続けてほしい。


左上から右下へ。アナゴ。ぎっしり。
マイワシの群れ。口を開けると顔こわい。
ハオコゼ。かわいいね。背びれに鋭いトゲがあるけど。
タツノオトシゴ。見入っちゃう造形だ。

ワンフロアを丸々使った「無せきつい動物水槽・カンブリア進化の大爆発」。ここがよかった。来てよかったと心底思った。
6億年前のカンブリア紀に誕生した古生代の海から進化しながら生き続ける多細胞生物、節足動物、軟体動物などを進化の順に展示している。
地味である。カイメン、オウムガイ、ホヤ、刺胞(しほう)生物とか。知らねえよ、と言いたくなる。
誰得?という展示ですが、意外とみなさん見入っている。僕らもそうだ。
噓のようだが本当だ。目の当たりにすると目を離せない。原始的なものには魔力があると思う。
無脊椎動物といえば、和歌山の京都大学白浜水族館を思い出す。
あそこは大学の研究機関であり、スマスイ以上にマニアックな展示であった。しかし多くの若者が訪れていた。
こたつに入っているつもりで、だらだら滞在することをおすすめする。

スマスイといえば、このイルカライブで流れるテーマソング「行こうよ!おいでよ!須磨水族園」のようだ。
スマスイに行ったと言うと、スマスイを知っているすべての方から一様にこの楽曲について言及された。
わかる。
冒頭に述べたスマスイの気恥ずかしさがここに凝縮されている。それゆえに心深くに刻み込まれる。スマスイと僕がわかちがたく結びつく。
イルカライブを終えるころ、僕はスマスイを大好きと真正面から言えるようになっていた(笑)


イルカライブ館の隣にあったオオアナコンダ水槽。
アナコンダトンネルがツボすぎる。何度も入る。


ロゴが昭和なアマゾン館。
ピラルクーの大きさと息子(4歳)をくらべて改めてその巨大さに驚く。
あれ、水槽の中にチューブ型の・・・通路!?
ピラルクーを頭上に仰ぎ見る。息を呑む。
アマゾン館には蒸し暑い。
館内には小川が流れ、熱帯性の植物が生い茂っている。カエルやトリが迎えてくれる。


ペンギン館。屋外と屋外展示があり、フンボルトとマゼランがいる。
これは屋内でマゼランである(たぶん)。
足の裏までじっくり観察できる展示である。もえる!

世界のさかな館。面白かった。
写真は保護色のために透けちゃったトランスルーセントグラスキャット。斬新(笑)
ポリプテルス・セネガルスは生きた化石。
ほかにもたくさん「変」なのが。必見。

屋上展望広場。タッチプールやドクターフィッシュ体験コーナーなどがあった。
平成27年3月20日リニューアルオープンしたというから、もうこの情景ではないと思う。
スマスイは日本初の水族館と呼ばれることもある。1657年に開演した。(写真右)
展示設備は確かに古い。しかしそれと面白さは関係ない。
ラッコ館ではラッコの骨格標本と剥製を並べていた。
さかなライブ劇場ではピラニアの大群が肉に一斉に喰らいつく様を見せ、その後ピラニアの頭骨をさわらせてくれた。
生き物の不思議について嬉しそうに語るPOPが点在し、水族館の意義を問う看板があった。
通路の途中に飼育作業室(展示水槽の裏側)を覗ける場所があり、結露がついてしまう水槽には手動のワイパーを設置していた。
真摯だと思う。

写真は屋上展望広場より敷地内を望んだもの。
スマスイは施設が屋外にバラバラにある。
ふらふらと行ったり来たりしながら、館内を散歩しつつ鑑賞することをおすすめする。
晴れた日はきっと心地よいことだろう。寒暖厳しければ、空調の効いた屋内にすぐ入ることもできる。
生き物の鑑賞を主目的にせず、生き物を主たる展示としている空間を闊歩してほしい。
「こたつ式」知的運動がはじまることだろう。
ということで13時。早く京都に行かねばなりません。→京都
またね、スマスイ。いつか絶対また行く。
4時間程度じゃ、ぜんぜん見足りないよ。
神戸市立須磨海浜水族園 公式サイト
→ http://sumasui.jp/
現在は2015年7月である。
過去に訪問した動物園や水族館について、私見を述べたいと思う。
ソースは2013年12月だ。いささか旧聞に属するため、当記事であつかう事項については、現在すでに存在しないものも含まれるかもしれない。
とはいえ、「以前行っていたこと」、つまり歴史を知ることは、当該の園館の志向理解を深める一助となるだろう。
いや、僕の懐古趣味的日記だけどね、所詮(笑)
須磨水族館を訪問したのはイキオイだ。
大晦日のこと。年越しを京都で迎えるために、家族(妻と当時4歳の息子と僕)で新幹線に乗っていたとき、不意に妻が「須磨の水族館が今日開いているよ・・・!」とつぶやいたのだ。受けて「降りよう」と即答した僕。京都行のチケットを反故にして4時間ほど兵庫に滞在することになったとさ。


須磨水族館。愛称はスマスイ、市民だけでなく自らもその愛称を自称しているようだ。
そういうのにちょっと恥ずかしい気になりませんか。アイドルが愛称で自分のことを呼ぶ感じ。
「“ももち”ねー」みたいなさ。恥ずかしい、でも「アリ」。みたいな。
むしろ、最初の一抹の照れが、それを乗り越えた先に深い親近感を醸成する気がする。
なお、ももちは愛称ではあるが正式名称でもある旨を書き添えておきます。
スマスイの話であった。
スマスイ近くの道路によくわからないモニュメントが並んでいた。冗談のわかる水族館という主張だろうか。
館自体のスマートな外観とのギャップにさらによくわからなくなる。
この時点で、「スマスイ=ちゃんこ鍋」のイメージがわが家族を覆い尽くしていた。今思えば、そのイメージは概ね合っていたわけだが。


スマスイには、広い敷地内に本館のほか12のパビリオン(遊園地含む)が点在している。経路があるわけではないので、東へ西へ敷地内を駆けまわることになる。施設間の移動はほぼ屋外だ。およそ水族館らしくない。これほど開放感のある水族館も珍しいと思う。


本館に入ってすぐ、スマスイのシンボルという「波の大水槽」(水量1200㌧)。大きい水槽はそれだけで魅力的だ。
世界ではじめての波が起きる水槽だったという(1987年)。外光も射しこむ。綺麗。
シロワニ(サメ)もいた。
目の端に違和感のあるものが映る。「こたつで魚鑑賞」・・・マジか(笑)
笑ってしまった。しかしこの取り組みは深いと思う。
一見奇異であるが、入ってしまうと「いつもの感じ」なのだ。それはもう落ち着く。年末の特番を見るようにサカナを見る。いつまでも見ていられる。
サカナを見ようと思ってずっと見ていられる人は、あまりいないと思う。見ていられるのは、すでに興味があるからで、興味をもつために見続けることは、ふつう、できない。
しかし居ること自体が快であるならば、そこでパンレットを読みつつおしゃべりに興じ、話の合間にときたまサカナを見るなんて芸当が可能になる。
そうして、ぼーっと見ていたら、「あ、あれと同じ」とか「さっきのと違う」とか気づく瞬間がくる。
興味は、ここで初めて発動する。
自分の(ぼーっと見ながら集めた)もっている情報と目の前のサカナを比較したくなるのだ。僕らはやっとサカナを真剣に見る。逆に言えば、具体的な目的がなければ、何かを見続けることはできない。
「こたつで魚鑑賞」は日本人の生活様式に根ざした見事な鑑賞法だと思う。
日本人にとって基本スキルである「こたつで長時間過ごす技術」が、「サカナに興味が無い人をサカナの前に座り続けさせる」ことを可能にしてしまった。慧眼である。
今後も続けてほしい。




左上から右下へ。アナゴ。ぎっしり。
マイワシの群れ。口を開けると顔こわい。
ハオコゼ。かわいいね。背びれに鋭いトゲがあるけど。
タツノオトシゴ。見入っちゃう造形だ。

ワンフロアを丸々使った「無せきつい動物水槽・カンブリア進化の大爆発」。ここがよかった。来てよかったと心底思った。
6億年前のカンブリア紀に誕生した古生代の海から進化しながら生き続ける多細胞生物、節足動物、軟体動物などを進化の順に展示している。
地味である。カイメン、オウムガイ、ホヤ、刺胞(しほう)生物とか。知らねえよ、と言いたくなる。
誰得?という展示ですが、意外とみなさん見入っている。僕らもそうだ。
噓のようだが本当だ。目の当たりにすると目を離せない。原始的なものには魔力があると思う。
無脊椎動物といえば、和歌山の京都大学白浜水族館を思い出す。
あそこは大学の研究機関であり、スマスイ以上にマニアックな展示であった。しかし多くの若者が訪れていた。
こたつに入っているつもりで、だらだら滞在することをおすすめする。

スマスイといえば、このイルカライブで流れるテーマソング「行こうよ!おいでよ!須磨水族園」のようだ。
スマスイに行ったと言うと、スマスイを知っているすべての方から一様にこの楽曲について言及された。
わかる。
冒頭に述べたスマスイの気恥ずかしさがここに凝縮されている。それゆえに心深くに刻み込まれる。スマスイと僕がわかちがたく結びつく。
イルカライブを終えるころ、僕はスマスイを大好きと真正面から言えるようになっていた(笑)



イルカライブ館の隣にあったオオアナコンダ水槽。
アナコンダトンネルがツボすぎる。何度も入る。



ロゴが昭和なアマゾン館。
ピラルクーの大きさと息子(4歳)をくらべて改めてその巨大さに驚く。
あれ、水槽の中にチューブ型の・・・通路!?
ピラルクーを頭上に仰ぎ見る。息を呑む。
アマゾン館には蒸し暑い。
館内には小川が流れ、熱帯性の植物が生い茂っている。カエルやトリが迎えてくれる。



ペンギン館。屋外と屋外展示があり、フンボルトとマゼランがいる。
これは屋内でマゼランである(たぶん)。
足の裏までじっくり観察できる展示である。もえる!


世界のさかな館。面白かった。
写真は保護色のために透けちゃったトランスルーセントグラスキャット。斬新(笑)
ポリプテルス・セネガルスは生きた化石。
ほかにもたくさん「変」なのが。必見。


屋上展望広場。タッチプールやドクターフィッシュ体験コーナーなどがあった。
平成27年3月20日リニューアルオープンしたというから、もうこの情景ではないと思う。
スマスイは日本初の水族館と呼ばれることもある。1657年に開演した。(写真右)
展示設備は確かに古い。しかしそれと面白さは関係ない。
ラッコ館ではラッコの骨格標本と剥製を並べていた。
さかなライブ劇場ではピラニアの大群が肉に一斉に喰らいつく様を見せ、その後ピラニアの頭骨をさわらせてくれた。
生き物の不思議について嬉しそうに語るPOPが点在し、水族館の意義を問う看板があった。
通路の途中に飼育作業室(展示水槽の裏側)を覗ける場所があり、結露がついてしまう水槽には手動のワイパーを設置していた。
真摯だと思う。

写真は屋上展望広場より敷地内を望んだもの。
スマスイは施設が屋外にバラバラにある。
ふらふらと行ったり来たりしながら、館内を散歩しつつ鑑賞することをおすすめする。
晴れた日はきっと心地よいことだろう。寒暖厳しければ、空調の効いた屋内にすぐ入ることもできる。
生き物の鑑賞を主目的にせず、生き物を主たる展示としている空間を闊歩してほしい。
「こたつ式」知的運動がはじまることだろう。
ということで13時。早く京都に行かねばなりません。→京都
またね、スマスイ。いつか絶対また行く。
4時間程度じゃ、ぜんぜん見足りないよ。
神戸市立須磨海浜水族園 公式サイト
→ http://sumasui.jp/
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最終更新日 : 2015-12-10