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セックス、珍獣、動物芸のほんとう (岩野俊郎講演会 2012 spring -2-)

2012-07-11 (Wed) 01:45

目次【前説~30分:31分~63分:64分~91分(終了)


2012年6月16日 於・北九州市立子育てふれあい交流プラザ“元気のもり”
到津の森公園園長・岩野俊郎氏講演「なぜ到津の森に子どもを連れて行きたくなるのか」

今回は31分から。人工哺育の悪についての話からスタート。

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31, 一頭ずつ個別に人工哺育したサルを20頭ほど集め、ひとつの部屋に集めた実験の話。結果、サルの行動はたった2つにわかれた。暴力的になるか、閉鎖的になるか。

32, 部屋の隅に隠れるか、真ん中にいるが近づく者に暴力的になるか。両者の根っこは同じ。見たこともない目の前の「もの」が不安で、逃げるか先に殺そうとするかの違い。改善は見込めない。サルとしてのコミュニケーションを知らないから。人工哺育時、人間の言葉をいくら与えてもサル語ではない。

33, 実は、交尾とは本能ではない。学習である。到津で現在35歳の人工哺育で育ったチンパンジーがいるが1回も交尾をしたことない。発情もエレクトも射精もするし、周りにメスがいつもいるのにも関わらず、ない。

34, なぜか。学習してないから。過去、同様の条件で交尾するビデオを見せた事例があるが駄目だった。自分たちの群れと違うから。交尾ですら知らずに学習しているからできる。

35, 旭山動物園の小菅の話。旭山のオランウータンに赤ちゃんが生まれたとき、育てきらなかった。生んだあと、母親はあまりの恐怖に袋かぶって隅っこに隠れちゃった。僕は殺さなくてよかったと思った。

36, もし、うんこしたときに赤ちゃんがおしりから出てきたらどうするか。それと同じことをこのオランウータンは経験した。「動いているから壁にぶつけて殺す」か、「隅っこに隠れる」か、どっちかしかない。彼女にとってはエイリアンと一緒だった。通常そうしないのは知らずに学習しているから。

37, 学習していなければ「うんこ」でしかない。でっかい動いている「うんこ」をおっぱいにつけられるか。飼育係が行って胸につけたが、抱かなかった。

38, 知らなければ、交尾も子ども生んでも育てることもできない。人間も同じ。見よう見まねこそが学習につながるし、学習はひとつのものを分かち合うというコミュニケーションにもつながる。

39, コミュニケーションとは個体間で自分の気持ちを相手に伝えることで、生きていくうえで最も大切。なぜ35歳のチンパンジーが交尾できないか。人間に育てられてチンパンジーのコミュニケーションができなかったから。

40, 私たち人間もいきなり交尾に及ぶことはない。話して、いけそうだなと思って手を繋いだり、抱いたりとかして、行為に到達する。それぞれの過程がコミュニケーション。いかにコミュニケーションが大事か。コミュニケーション能力がないと不幸。

41, コミュニケーションとは単なる相互理解ではなく、自己防衛のために必要なこと。食べることも繁殖行動もすべて学習。本能なら毒でも食べかねない。

42, 有毒の植物トリカブトと、無害のニリンソウは花の違いでしか見分けつかない。生半可な知識だと、花を確認せずに食して死に至るかもしれない。群れ生活は知らず知らずにそうしたことを学習させる。ひいては社会というものも学習させる。

43, 群れのルールは群れ生活の中に身を置かねばわからない。しかし最初から大きな群れには入れないような仕組みになっている。小さな群れで階級、秩序を知り、小さな群れの中で生きる術を覚えていく。

44, 小さな群れの経験をもとに、大きな群れに行けば、戸惑わない。人間も同じ。親子、子ども同士、異年齢の子どもと、身近な親以外の大人と・・・と原初的な社会から経験していく。

45, それが小中高、会社と次第に大きくなる。人工哺育がいけないのは、大事に育てるから。結果自分だけの言葉を伝えてしまう。すると原初的な小さな社会にすらなじめない。当然大きな社会にもなじめない。

46, 36歳のチンパンジーはもう群れに絶対に入れない。群れのしきたりも秩序も知らない僕ら人間が育て、人間の秩序が染みついたから。僕らは、今までいかに不幸な動物を生み出してきたか、知っておかないといけない。

47, 人工哺育をすると閉鎖的か暴力的になるか2種類しかいない。幼児期の大切さとは、人間なら多様な他人や、多様な原初的な社会の中で遊ぶことにある。この施設(=子育てふれあい交流プラザ)も、単に遊ぶ場所としてでなく、「他人」や「社会」という意味で使うべき。

48, 「この子が遊んでるから盗らないでね」「貸してね」と大人が言うのでは駄目。力関係があるということを知らせないといけない。決めるのは誰か。遊んでいる本人の問題。他者との関係を学べるのが小さな社会のいいところ。これを抜けないと次の段階にいかない。

49, 何事にも「思い」がないとうまくいかない。僕が到津の森を預かって思ったのは、建物を管理するのではなく、皆さんに喜んでもらうため何をどうするかだった。だから到津の今がある。建物が立派なだけでは絶対うまくいかない。作った側にも、利用する側にも、どう利用しようかという気持ちが必要。

50, 建物を「ハード」と言う。中に詰めるもの「ソフト」と言う。ソフトとは僕たちの気持ち、心、ハート。ハードからハートを抜くと、人を食う、金を食うの汚点が2つしか残らない。

51, (施設ができあがった後で園長を依頼された岩野氏が)到津の森を初めて見たとき、ズーラシアの小型版だと思った。小型版でうまくいったところを知らない。生き延びる方法は、市民の到津を残したいという気持ちと、それに応える私たちの心を込めていくことしかないと思った。それが今の到津の森の根底。

52, 開館して10年経つが、到津の森に来たことない市民もいる。それは悪いことじゃない。でもなぜ行かなかったかというと、「思い」を通して動物園を見たことないから。

53, 到津も過去の動物園の固定概念を捨て去り、新しい意味を込めてつくっていかねばならない。たとえば新しい動物園は、幼児期の大切さ、人格形成はこの時期にされることを踏まえて、積極的に社会参加をするように子どもたちを導かねばならない。

54, 今は子どもだけでは社会参加しにくい社会だから、周囲の大人がどう関わっていくかが大事。子どもに必要なのは、「小さな社会を体験すること」だとわかってないといけない。これで1つめのスライドが終わり。

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55, これから僕が思う「動物園はこうでないといけない」という話をする。左の写真は私が来るもっと前のチンパンジー舎の写真。運ばれてきた小さな檻のまま飼われかねないほど劣悪。今は(土と草と空がある)こういったところ(※画像右の写真)で飼っている。動物園は過去を清算、反省しないといけない。

56, マンドリル、こんなところ(※写真貼っていません)で飼っていた。昔は動物の「種類」を見ていた。僕らが社会に対して何を伝えたいかという啓発性が欠如していた。動物園も動物の情報が非常に貧弱だったから。

57, 飼うこととその動物を知っていることは別。僕も若い頃珍しい動物を飼いたかった。「ただ見たいだけ」という意識だった。どんなところで生活し、どんな生き様があるかを知ろうとしていなかった。社会現象への軽はずみな迎合をしてはならない。カドリードミニオン(熊本)のパン君(チンパンジー)は7歳か8歳だけどとても小さい。大きいサルはショーに使えない。

58, 危険だし、かわいらしくないから。つまりこのときチンパンジーに求めているのは、かわいらしさと馬鹿らしさ。これが人間だったら笑えるか。もし障害児が何かやり損なったとしたら笑えるか。動物だったら笑えるというのは、どこかに障害児を笑ってやろうという思いがないか。あのチンパンジーを笑うのは私たち自身の心を笑っているのと同じ。

59, チンパンジーはそんなことする必要はない。こんな社会的迎合が起きる原因はテレビ。今のテレビを見て何かを誰かを笑わない番組があるか。すべて笑っていないか。軽はずみな迎合は軽はずみな判断をしてしまう。

60, 社会的には「動物園=レジャー産業」だ。珍獣奇獣、動物芸、ゾウ、チンパンジー、奇妙な仕草をする。立つレッサーパンダ、頭を抱えるクマ。これらは動物のことを考えているか。レッサーパンダが立つのは当たり前。注目すべきは立つことではなく、「なぜ」立つのかではないか。

61, レッサーパンダが立つのは高いところのエサをとるため。プレーリードッグが立つのは遠くの敵を見るため。キリンの首が長いのは高いところのエサを食べるため。それぞれに理由がある。行為だけを取り上げても意味がない。周南市徳山動物園の頭を抱えるクマには注意した。クマが頭を抱えて転げ回るのは拘禁状態だから。神経的に病んでいる。

62, 病んでいるものを面白いと言うのは動物園のやることではない。そういったことが多々ある。最近はヤギの上にウサギか何か乗ったと。乗せることに何の意味があるのか。メディアはそれを取り上げ、でも僕らはこれを面白そうと思っちゃう。

63, 動物園の運営と全然関係ないことをなぜ是とするか。入園者数が欲しいから。仙台の八木山動物園で、子どもたちに夢を与えるためジャイアントパンダをもってくると盛り上がっている。愚の骨頂。子どもたちに物だけを与えて失敗してきた歴史が今の日本ではないか。いかに次の夢を語れるよう丁寧に話してやるかが大事ではないか。


つづく。


到津の森公園 公式サイト
http://www.itozu-zoo.jp/

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ホントはもっと過激でチョー面白かったとか言えないwwwww


目次【前説~30分:31分~63分:64分~91分(終了)


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最終更新日 : 2019-01-09

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